こんにちわ。ドリーです。日本に蔓延る「似非保守」の作品を一冊づつ取り上げ、その身勝手な歴史認識、を紹介する、企画。今年も、冬が近づき、終わりが迫ってきましたが、皆さんは如何お過ごしですか。
◆「炎上の女王」杉田水脈
前回、百田尚樹の歴史観を紹介して今回は第2回目。で、今回は、先日大炎上した「杉田水脈」を取り上げたいと思う。もはや説明は不要だろう。数多くの失言を連発し、保守の中の「炎上の女王」と崇められ、その確固たる地位を確立した杉田氏。しかしその本質はあまり触れられていない。
そこで今回、私が、杉田氏の著作を読み解き、彼女の考えの「真の恐ろしさ」に、迫って行きたい。杉田氏の「女性は嘘をつく」発言は多くの人に批判されたが、実は、杉田氏の攻撃対象は、以前は女性ではなくLGBTに向けられており、保守の中において、彼女は、昨今日本に蔓延するLGBTの排除の旗振り役として活躍してきた。
杉田氏はその自著『なぜ私は左翼と戦うのか』の中で子供達に若い時に「同性愛」を肯定的に教える学校に懸念を示し、学校で「性の多様性」を伝える教育に反対の立場を示す。
“LGBTの権利を主張する人は、権利があることを積極的に啓蒙するために教育の中に取り込もうと主張しています。” 〈『なぜ私は左翼と戦うのか』青林堂P137〉
そして杉田氏は、新潮のLGBT論文で、自ら性的少数者に対する誤った知識を披露し、大炎上した。その事は、今も、覚えているだろう。杉田氏の主張は、発表当時、衝撃的なインパクトがあり、私を含め誰もが驚いた。だが、あの寄稿の恐ろしさは実は「生産性」とはまた別のところにある、実は、あの寄稿には恐るべき狡猾な同性愛排除レトリックが潜んでいるのだ。
◆論理的に破綻している杉田LGBT論
一つ一つ見て行こう。先ず杉田氏は、冒頭で、LGBTを肯定的に取り上げる報道が「行き過ぎ」だと主張し、朝日新聞を批判する。
“朝日新聞や毎日新聞といったリベラルなメディアは「LGBT」の権利を認め、彼らを支援する動きを報道することが好きなようですが、違和感を覚えざるをません。発行部数から言ったら、朝日新聞の影響の大きさは否めないでしょう。“『新潮45』2018年8月号。
”朝日新聞が「LGBT」を報道する意味があるのでしょうか。むしろ冷静に批判してしかるべきではないかと思います。”『新潮45』2018年8月号。
そして後半部分。杉田は、同性愛者の苦しみは「親に理解されない事」が問題だと言い始め、表向きはLGBTに同情する素振りを見せる。
”LGBTの当事者たちの方から聞いた話によれば、生きづらさという観点でいえば、社会的な差別云々よりも、自分たちの親が理解してくれないことのほうがつらいと言います。親は自分たちの子供が、自分たちと同じように結婚して、やがて子供をもうけてくれると信じています。だから、子供が同性愛者だと分かると、すごいショックを受ける“『新潮45』2018年8月号。
つまり杉田氏は「LGBTを差別しません」と言いながら同時に「LGBTを肯定的に語るのは行き過ぎだ」と主張する。この主張が、如何に矛盾しているか。誰がどう見ても分かるだろう。
杉田氏は、LGBTの「親の偏見」は良くないと言いながら同時に「LGBTの理解が促進されることを嫌がる」のである。
これは明らかに論理破綻している。冒頭で杉田氏は「親の無理解」を打破すべき課題だと位置づけた。が、後半で、彼女は、性の多様性を肯定的に報じるのは行き過ぎだと言うのだ。
繰り返すが、これは明らか矛盾だ。なぜなら性の多様性を肯定的に報じられることなしに、親の無理解を打破するのは、不可能だからだ。
確かに杉田氏の主張する「親の無理解」は、LGBTには切実な問題ではあるが、その無理解が生じる原因は、報道が「行き過ぎ」ではなく逆に「足りない」事の証左でしかない。が、杉田氏は過敏に報道の「行き過ぎ」に反応し、反対に「親の偏見」に晒されるLGBTに同情を示すという二つの矛盾した態度を取り、自ら論理破綻に陥る。杉田水脈、排外主義ワンダーランド、反知性ジェットコースターである。
まさにそういった杉田氏の性的少数者を「見えないもの」として扱ってきた欺瞞性こそ、LGBTが「親に理解」されないことの最大の原因ではないか。
杉田氏は、差別に反対するようなポーズを取りながら、その実、差別に加担している。何故なら「LGBTは隅に隠れて人目に付かない限り、認める」というのが、既に「差別」だからである。このように巧妙に差別レトリックを用いて杉田氏は、自分の理解の及ばない性的少数者の排除を正当化する。それこそが彼女の狡猾な差別レトリックなのである。
◆勉強不足で失笑ものの杉田流「慰安婦問題」論
このように巧妙に仕掛けた罠により、杉田氏は、巧妙に、自分の想像できない少数者の排斥を合理化する。・・・が、ここへきて実は、あまり批判されないのが慰安婦問題である。つーか、これこそがまさに杉田氏の核心であり、杉田氏の思想は全て「慰安婦問題」から始まっているのだと言っても過言ではない。ただ、その主張は、非常に稚拙で、失笑モノで、恐怖すら覚える程、破綻だらけなのだ。杉田水脈、排外主義ワンダーランド、ホーンテッド杉田マンションである。ではその主張を見て行こう。
杉田氏は、『韓国人の皆さん強制連行されたで本当にいいの?』に収録された女帝「櫻井よしこ」との対談の中で、韓国人の主張する「慰安婦問題」が捏造であると主張し、こう述べる。
”私は思うのですが、どうして韓国人はそこまでして日本人に強制連行されたことにしたがるのでしょうか”、“そのとき一体、当時の韓国人の大人たちは何をしていたのでしょうか。子供たちが日本に連れていかれるのを指をくわえて見ていたとでもいうのでしょうか。“〈『韓国人の皆さん強制連行されたで本当にいいの?』育鵬社p8〉
同書の中で、杉田氏は、もし朝鮮人が、強制連行されたなら、何故当時の朝鮮人は暴動を起こさなかったか。と主張している。これは多くの否定論の一つであり、慰安婦否定論者のお得意の論法だ。しかしこの疑問は、ちょっと多少の資料を読み込めば、すぐに解消する謎なのだ。そもそも慰安婦制度は1932年から、始まったのであり、何万人の人を一気に奴隷狩りにして連れて行ったものではない。しかも、暴動が起きない理由は、当時の女性の証言を読めばすでに書かれているのだ。
例えば、李容洙さんの場合は、自著の中で、こう回想している。
“帰国して一年が経ち、わたしは18歳になっていました。「日本軍の慰安婦だったと知られたら殺されるのでは」こわくてこわくてひたすら過去を隠しました。“、”母も、わたしがどこに連れて行かれ、そこで何をされたのか全く知りません。ただ金を稼ぎに行ったのだと思っているだけです“〈『わたしは日本軍「慰安婦」だった』(新日本出版社)p78〉
別の女性は証言でこう回想する。
“故郷に帰ってみると、父は既に病気で、亡くなっていました。--母には慰安婦だったということを言えません。工場に就職して勉強もしていたと言いました。”『証言、強制連行された朝鮮人慰安婦たち』明石書店p128〉
つまり女性達は、日本軍に慰安婦にされた事実を、家族に知られまいが為に「出稼ぎ」に行ったとか「就職していた」とかウソをつかざるを得なかったのだ。女性たちは、慰安婦だったことを家族に知られては、そのことで、差別を受ける事を怖れ、ずっとそのことをひた隠しにしてきた。ゆえに、家族が子供の境遇を知らないのだから杉田氏の言う様な暴動が起きる可能性は「低い」と見る方が、理にかなっている。
杉田氏は更に「性奴隷」に関して日本の名誉を汚したと怪気炎を上げる。
“女からすれば、当時の実態からして、自らセックス・スレーブだったとは言えない”〈『女性だからこそ解決できる慰安婦問題』自由社p203)
杉田氏は、女性の待遇が良かったのだから「性奴隷じゃない」と主張する。が、そもそも性行為は「同意」があって初めて成り立つものであって「同意」の存在しえない状況下では行われる性行為は全て「性奴隷」とも言ってもなにも差し支えないだろう。お金を稼ぐ仕事には「同意」しても尊厳を奪われる仕事には「同意」していないからだ。
ちなみに当時の日本兵も、女性達が「騙されていた」ことを証言している。
“慰安婦がいちばん兵隊の役に立ってくれているのは事実だが、慰安婦も多くは、騙されて連れてこられたのである”〈『慰安所男のホンネ』梨の木舎p153〉
◆歴史修正主義議員こそ日本の恥
しかし杉田水脈は更に、こういう言い方をして詭弁を弄する。
“慰安婦になった人の意思に反したことをもって強制性があると言っている。そういう意味の強制性なら、今の風俗業で働く人だって、一部には好きで従事している人がいるかもしれないけれど、多くは金銭を稼ぐためにやむえをず風俗業で働いているんでしょう”(『女性だからこそ解決できる慰安婦問題』自由社 p203)
これもまた詭弁である。杉田氏は、貧しい女性を想定して、今もそういう貧しい女性がいると間違った比較を持ち出すが、コレは詭弁だ。そもそも女性が風俗店で働くのは犯罪ではないが、仕事の内容を偽って従事させたら犯罪だろーがって話なのだが、杉田氏は、この二つを意図的に混同している。
そもそも何故、騙されたのか。それは日本軍が、売春に関する条約を、植民地に適応しなかったからだ。日本軍は、国際条約の制約を受けなかった為、朝鮮、台湾から大量の慰安婦が徴収することができたのだ。慰安婦制度は、日本軍の誤った政策において生まれたのだ。
このように底抜けの無知をさらけ出す国会議員、杉田水脈さん
一部ネットに存在する歴史修正主義の温床で得ただけのような知識でものを語る杉田水脈が現職の国家議員である事が、日本を貶めている最大の元凶であり、日本の恥である。
このような無知蒙昧な人間を増長させてしまったのは我々日本人の責任とも言える。日本人の一人として改めて反省したい。
<文/ドリー>
【ドリー】
本名・秋田俊太郎。1990年、岡山県生まれ。ブログ「埋没地蔵の館」において、ビジネス書から文芸作品まで独自の視点から書評を展開中。同ブログを経て、amazonに投稿した『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』レビューが話題となる。著書に、村上春樹長編13作品を独自解釈で評論した『村上春樹いじり』(三五館)がある。ツイッター:@0106syuntaro
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October 15, 2020 at 06:54AM
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