◇16日 大相撲名古屋場所13日目(ドルフィンズアリーナ)
照ノ富士は今場所初めてヒヤリとさせる相撲を見せた。正代の当たりと左からのすくい投げに大きく体勢を崩した。場内から悲鳴が上がる。放送席の小生も、思わず声を出してしまった。
しかし、正代の見せ場はここまで。体勢を立て直した照ノ富士は落ち着いて得意の左上手を引きつけて、休むことなく攻めて一気に押し出した。悲鳴を上げたのは私たちだけで、照ノ富士はあくまで冷静だった。万全の相撲で白鵬より先に13連勝を果たした。
この瞬間に照ノ富士の横綱昇進が決まったと言える。思えば不振の正代との対戦成績は拮抗(きっこう)しているだけに、私たちが考えるよりはるかに難敵であった。見事な相撲でした。
その照ノ富士の勝利を見ていた白鵬の心境やいかに。腰の重い高安は勝負が長くなると、異様な強さを見せることがある。そんなことを知ってか知らずか、白鵬は立ち合いすぐに高安の右かいなを思い切り、とったりの奇襲に出る。
もし、やり損なえば墓穴を掘りかねない技である。しかしこの一発で決めるとばかり、何のちゅうちょもなく勝負に出て、見事に成功させた。勝負師白鵬の面目躍如の一番であった。しかし遠慮なく言わせてもらえば、横綱が立ち合いからいきなりとったりをするのは、決して褒められたことではない。
小兵力士とか、大敵を相手にする格下力士がイチかバチかに出る技である。白鵬がプライドもかなぐり捨て勝ちにこだわったのには、絶対優勝するぞの強い信念が見て取れる。それだけに、その両雄の一騎打ちが見ものである。千秋楽が待ち遠しくなってきた。
13日目は珍しく熱戦が多く楽しかった。特に豊昇龍は良くなってきた。宇良はもったいない相撲だった。あれは髪を引っ張らなくても転んでいる。
もっと相撲の話をしたいのだが、腹が減ってこれ以上は無理。やっと腹の調子が良くなった。体力回復に「鎌田」のステーキ弁当を頂戴したのでありがたくいただきます。それでは皆さんはあと2日間、優勝争いを楽しんでください。
私は仕事が休みなので、帰京の準備をします。(元横綱)
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