【競馬人生劇場・平松さとし】1987年、3歳馬に再開放された天皇賞・秋(G1)。その後、最初に3歳で盾を手にしたのは96年のバブルガムフェロー(当時4歳表記)だった。
同馬を管理したのは藤沢和雄調教師。当時は3歳牡馬の秋といえばほぼオートマチックに菊花賞(G1)を目指した時代。そんな頃、藤沢和師は前年に朝日杯3歳S(現在の朝日杯フューチュリティS、G1)を勝利し、2歳チャンピオン(当時3歳表記)となった時点で早々に天皇賞・秋を目指すことを明言。実際、秋には淀へ向かわず東京競馬場に姿を現した。
この年の古馬勢はそうそうたるメンバー。1番人気は天皇賞・春の覇者サクラローレルであり2番人気が4つの重賞を含む6連勝中のマーベラスサンデー(翌年、宝塚記念・G1を制覇)。他にも有馬記念(G1)などG1・3勝のマヤノトップガンも出ていた。それでも3歳同士ではなく、こちらを選んだ理由を後の1500勝トレーナーは次のように語っていた。
「バブルは前進気勢の強い馬。3000メートルよりも2000メートル向きだし、古馬とは重量差もあるので通用すると思う」
そして、騎乗した蛯名正義騎手(現調教師)には次のように告げてレースへ送り込んだ。
「小細工はせず、堂々と受けて立つ競馬をして大丈夫」
結果、先述の3頭より前で競馬をした上で、全ての馬の追走を封じて先頭でゴール。後に名手の名をほしいままにする蛯名騎手にとってはこれが初めてのJRAのG1勝ち。冒頭で記したように3歳馬としても近代競馬では初の盾制覇となった。ちなみに2002年にはシンボリクリスエスが6年ぶりに3歳馬として戴冠する。現時点で、3歳で頂点に立ったのはこの2頭しかいないのだが、いずれも藤沢和師が管理していたのは偶然ではないだろう。
今年は3歳のエフフォーリア(美浦・鹿戸雄一厩舎)が出走。藤沢和厩舎のグランアレグリア(牝5歳)がその前に立ちはだかるのか、はたまたコントレイルら他の馬が台頭するのか。注目したい。(フリーライター)
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