イスラエルに行ってみたいと思ったのは、大学時代の友人、リーモアの影響だ。イスラエル系アメリカ人の彼女はニューヨーク育ちながら、大学に入る前の3年間をイスラエルで過ごしていた。彼女の語る現地の様子は、ニュースなどで見る紛争状態の国とは程遠く、聞いているだけで太陽と地中海のきらめきや生き生きとした街の様子が目に浮かぶようだった。
ゆっくりと、丁寧に素材を混ぜる友人の姿
今回紹介するシャクシューカは、大学時代、リーモアが週末のブランチによく作ってくれた料理だった。トマトをどっさりとフライパンで炒め煮したなかに卵を割り入れ、木ベラで混ぜ合わせる。普段活発な彼女からは想像もつかないほどゆっくりと、丁寧に混ぜる手元がいまでも目に浮かぶ。
週末の食卓に上るシャクシューカは、卵料理というよりはトマトソースの卵とじと言った感じで、寄せ豆腐のようにしっとりしている。滋味深い味わいと食感が絶妙で、遅くまで飲んだ次の朝(というよりはお昼頃)、ぼーっとする頭をかかえてコーヒーをすすり、ちぎったトーストにシャクシューカをのせて食べるのが、週末のみんなの楽しみだった。
開放的な地中海沿岸の街テルアビブ
イスラエルを初めて訪れたのは、大学を卒業してからのこと。当時、イスラエル最大の都市テルアビブに住んでいたリーモアのもとに遊びに行った時だ。イスタンブール経由で空港に到着したのは土曜日の早朝で、空港は閑散としていた。イスラエルでは、金曜日の日没から土曜日の日没までを「安息日」とするユダヤ教の教えを守り、交通機関をはじめ、あらゆるサービスがストップしてしまう。厳格なユダヤ教徒は電気のスイッチを入れることすら「仕事」とみなしてしないほど、ものすごく真面目に休むのだ。そんななか、彼女は眠い目をこすりながら車で迎えにきてくれていた。
テルアビブは、聞いていた通り、活気のある魅力的な街だった。強い日差しでいい具合にあせた色の建物に、涼しい影をつくる大きな木々が寄り添い、どこか南欧の街のようだ。歩道にせり出したカフェのテラスはどこも人であふれ、それだけでも時間がゆったりと流れているように感じる。
日差しは強いものの、東京よりもカラッとしているからか、屋外の木陰の心地よさは格別だ。地中海に面したビーチや中心部にある半屋外のカルメル市場をはじめ、街中にはちょっとしたスペースに屋根をつけた本屋やフリーマーケットが点在していて、一日中外で過ごすことができる。テルアビブの街が開放的に感じるのは、このように、外と内の境界線があいまいだからかも知れない。
シャクシューカを作るたびに思い出すのは、こうしたテルアビブの街の風景だ。「シャクシューカ」というおまじないのような名前と、大学時代に聞いていたイスラエルのイメージ、そして実際に訪れたテルアビブの街が思いのほか強く結びついていたのかも知れない。実際は、北アフリカ発祥の料理で、地中海沿岸から中東のさまざまな地域で食べられていると知ったのは最近のことだ。この不思議な名前は、もともとベルベル語で「ごちゃまぜ」を意味するという。
そして、ここ数年、旅先でおしゃれなカフェに入ると、朝食のメニューの中に「シャクシューカ」を目にするようになった。「お!」と思うのもつかの間、運ばれてきたシャクシューカを見て驚いた。割り入れたまま調理された卵がトマトソースに浮かんでいる料理だったのだ。最初こそ、カフェ独自のスタイルなのだと思ったが、国や店が変わっても、私が慣れ親しんだ卵とじ状のシャクシューカが出てくることはなかった。
友人の姉シャロンさんのレシピは
そこで、今回紹介するレシピを教えてくれた、リーモアの姉でテルアビブ在住のシャロンさんに、シャクシューカの形状の謎についてたずねると、カフェで提供されていた、トマトソースに卵を割り入れたまま調理したものが一般的で、卵を混ぜ合わせるのは、実家でお母さんがやっていた作り方だと教えてくれた。この話をリーモアに伝えると、「実は、私もイスラエルのカフェで初めてシャクシューカを注文した時はびっくりして、シェフが卵を混ぜ忘れたのかと思った」と返ってきて、思わず笑ってしまった。
混ぜても混ぜなくても、どちらもおいしいが、大学以来、知らぬうちに友人のおふくろの味を作り続けていた私には、やっぱり、混ぜ合わせた方が親しみある味に感じてしまう。
<シャクシューカ>
【材料】
完熟トマト 2~3個
タマネギ(大) 1/2個
ニンニク 2片
卵 2〜3個
オリーブオイル 大さじ2
塩コショウ
【作り方】
1. 大きなフライパンを中火にかけ、オリーブオイルを入れる。
2. みじん切りにしたタマネギとニンニク、塩を入れ、5分ほど炒める。
3. みじん切りにしたトマトを入れ、水分が減るまで10~15分炒める。
4. トマトのソースに穴を作り、卵を割り入れ、ふたをして5分ほど火を通す(もしくはトマトソースと卵を混ぜ合わせてからふたをする)。
5. 出来上がり! パンと一緒にどうぞ。
*「トマトを入れる前にゆでたビーツを入れたり、砕いた羊のチーズを最後に入れたり、コリアンダーを飾ったりしてもおいしいですよ」とシャロンさん
*卵は、形を残すなら1人1個、混ぜ合わせるなら2人分で3個がちょうどいい
*ニンニクを利かせた方がおいしいが、においが気になる方は1片に減らしてもOK
PROFILE
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August 12, 2020 at 05:00AM
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シンプルだけど味わい深い おまじないのような名の「シャクシューカ」 - 朝日新聞社
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