フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。春らしくて、とてもおいしかったと、元気だった頃の母が褒めてくれた混ぜご飯。時に、菜の花のほろ苦さが、私の胸を締め付ける。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
話は、認知症の母と同居せざるを得なくなった2015年よりも前に戻る。67歳の母が限りなくグレーなアルツハイマー型認知症だと診断されたのは、私が40歳のとき。まだまだ母は元気なのだから、1人で生活できると思っていた。地域包括支援センターの職員に「お母様が独りで暮らせなくなるときが必ずくる。そのときどうするか考えておくように」と言われたことがあったが、なぜ生活が困難になるのか、母の変化を想像することができなかった。
当時は月2回、駅近くのショッピングモールにあるコーヒーショップで待ち合わせをして、「もの忘れ外来」に付き添うことと、仕事の合間を縫って、ときどき夕食を作りに帰るだけで精一杯だった。母の1行日誌を読み返すと「2008年2月21日 朱夏が来宅。めずらしい混ぜごはんを作ってくれた。春らしくて、とてもおいしかった。すぐ帰った」とある。いつも日帰りだったので、実際の母の暮らしぶりは見ているようで見てはいなかった。まだ母が元気なうちにもっともっとできることがあったよねと、日誌を手にとるたびに当時の私に話しかけてしまう。
菜の花とベーコンの洋風混ぜごはん
カリカリベーコンを混ぜたバター風味の混ぜごはんです。刻んだ菜の花の緑と半熟卵の白と黄色でカラフル! パッと食卓が明るくなります。混ぜるだけで手軽にでき、ボリュームもしっかり! 半熟卵は、ごはんに混ぜるとしっとりなじんで食べやすくなります。
材料 2人分
炊きたてのごはん 茶碗2杯分(300g)
菜の花 4~5本
ベーコン 1枚
バター 40g
しょうゆ 少々
塩 ひとつまみ
半熟卵 2個
作り方
1 ベーコンは幅2cmに切り、バターでこんがり焼く
2 菜の花はゆでて水けをしっかり絞り、細かく刻む。半熟卵も刻む
3 ごはんに1のベーコンとフライパンに残った焼き汁、半熟卵、しょうゆ、塩を混ぜ合わせ、菜の花を加えてさっくりと混ぜる
大久保朱夏
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