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Monday, March 30, 2020

女性が、大人が、ガンプラに没頭したらダメですか? モビルスーツを愛するOLと女子高生の物語 - ダ・ヴィンチニュース

『HGに恋するふたり』(漫画:工藤マコト、原案:矢立肇・富野由悠季/KADOKAWA)

「男だから」「女だから」と言われることが減ったとはいえ、やっぱり今でも「多数派」と「少数派」の間には壁がある。誰かに抑圧されることはなかったとしても、そもそも少数派は周囲と話が合わないため生きづらい。でも「好き」を抑え込んで周囲に合わせて生きるというのは、本当につらいことだ。それは大人だって同じこと。

『HGに恋するふたり』(漫画:工藤マコト、原案:矢立肇・富野由悠季/KADOKAWA)は、そんな少数派の趣味を諦めて生きてきたアラサーOL・神崎さやかが、周囲を気にせず趣味を満喫する女子高生・高宮宇宙(そら)に出会って変わっていく物語。

モビルスーツが大好き! だけど…

 神崎は、幼い頃テレビで見た『機動新世紀ガンダムX』のモビルスーツを「かっこいい」と思い、ガンプラに興味を持つ。しかし母親や周囲から「恥ずかしいわ…女の子なのに」と冷たい視線を向けられ、子どもながらにそれを「良くないこと」と処理して忘れかけていた。


 だが14歳の時、彼女は再びガンダムと出会ってしまう。偶然テレビをつけた瞬間に映し出された『機動戦士ガンダムSEED』で、炎の中立ち上がる「ストライクガンダム」にひとめぼれしてしまったのだ。


 幸い「ガンダムSEED」を機に女性でもガンダムを観る人は増えた。しかし周囲が注目しているのはかっこいい男性キャラクターたち。でも神崎は、何よりモビルスーツが好きなのだ。ガンプラを作ってみたい。でもこんな趣味、親にバレたらまた…。そうこうしているうちに、神崎は30歳になってしまった。

 この年は平成がちょうど終わる年。神崎は「ここが未練に区切りをうついい機会なのかもしれない」と考えていたのだが、ここで運命的な出会いを果たす――。


「好き」であることに性別も年齢も関係ないっ!

 神崎が偶然すれ違いざまにぶつかった女子高生は、なんとガンプラオタクだった。神崎のガンプラを見る視線に気づいたその女子高生、高宮宇宙の家は模型店。キラキラとした目で「お姉さん 私と同じ目してるっ」「一緒につくりましょうっ」と誘われ、ここから神崎のガンプラ作りが始まっていく。


 ガンプラに限らず、神崎のように性別や年齢、同士の有無などを理由に趣味を諦めてしまう人は案外多い。筆者も女でありながら可愛い女の子が登場する日常アニメや美少女ゲームが好きなので、少数派の切なさはよく分かる。「女性なのに珍しいですね」「どういう視点で好きなんですか? 憧れ?」など好奇の目を向けられるのは良い方で、「男性に媚びている」と的外れなことを言い出す人もいるのが現実だ。ジャンルは違えど「好き」という気持ちに違いはないはずなのに!

 でも、そうやっていろいろありながらも1つ言えることは、「好き」を貫くことで得られる幸せは本物だということ。自分の気持ちに蓋をして見て見ぬふりをしたり他人に合わせて妥協したりしても、人間そう簡単には変われない。せっかくなら、心が震える感動を、幸せを、たくさん味わって生きていきたい。

 作中でも、我が道をいく高宮はもちろん、自分の趣味と向き合いガンプラ作りを始めた神崎もとっても生き生きとしている。今はまだ一歩踏み出せずにいる人も、この『HGに恋するふたり』を読めば心の声の重要性に気が付くはず。この本が、なんとなくもやもやしている人たちの幸せへの一歩になればいいなと切に思う。

文=月乃雫

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