巨人のエース・菅野智之投手(31)が米大リーグ挑戦に向けたポスティングシステムの申請を決断した。球団もそのための準備に入っている。メジャー行きが決まれば巨人にとって大幅な戦力ダウンとなるが、苦境に立たされることになるG投手陣からは「むしろ遅いくらい」とエールが送られている。
あとは本人の決断次第だった。球団は早い段階から菅野のこれまでのチームへの貢献度を重視。挑戦するにせよ残留するにせよ、その意志を尊重する考えを示してきた。
日本シリーズでは悔しい思いをしたが、今季は開幕投手からの13連勝を飾るなど14勝2敗、防御率1・97の好成績で最多勝と最高勝率の投手二冠を手にした。2017年オフに「絶対的な力をつけて文句なくいきたい」としていたメジャーへの扉をついに開くときが来た。ベテランスタッフの1人は「菅野には、もう日本でやることがない」と話す。選手として常に上を目指し続けてきた右腕にとって、登るべき山は海の向こうにしか残されていなかった。
G投手陣の1人は「むしろ遅いくらい」とエースの決断を後押しする。背景にあるのは年齢だ。「松井(秀喜)さんがメジャーの第一線でバリバリに活躍できたのは29歳の年に向こうに行けたことが大きい。投手では上原(浩治)さんが34歳から8年間活躍したけど、あの人は制球力が抜群に良かった。(高橋)尚成さんは35歳から4年間。ある程度若くないと成功は難しい」との理由から海外FA権取得1年前の32歳の年での挑戦に賛成する。
昨オフの山口俊(ブルージェイズ)まで巨人はポスティングシステムを認めず、メジャーに行くには海外FA権の取得しか選択肢はなかった。星稜高からプロ入りし、1年目のシーズン終盤にはレギュラーに定着した松井氏はあくまでレアケース。即戦力投手には大卒が圧倒的に多く、1年目から活躍できても海外FA権を取得した時には30歳を超えてしまう。しかも菅野は1年間の浪人生活を経験しており、早すぎるということはない。
ネックとなるのは新型コロナウイルス感染拡大の影響で来季の大リーグが不透明なことだろう。今年はNPBが何とか120試合制でシーズンを乗り切ったのに対して、MLBは例年の162試合から60試合に短縮された。バイデン次期米大統領がどんな政策を取るかで状況が変わる可能性もある。残留がゼロというわけでもなさそうだが、夢への一歩を踏み出すことだけは確かだ。
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