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Saturday, May 23, 2020

悪魔払いがトラウマに…LGBTには「治療」が必要 インドネシア - livedoor

【AFP=時事】アンディンさん(31、仮名)は、トランスジェンダーであることから「救う」ためとして悪魔払いをされた記憶に悩まされている。アンディンさんは、必死に「治療」しようとする家族の嫌がらせや虐待に20年間耐えてきた。

 鍵のかかった部屋に何日も閉じ込められコーラン(イスラム教の聖典)を聞かされたり、イスラム教指導者に「性別の病」を清めるためだと氷水をかけられたりもした。

 しかし、アンディンさんの心を打ち砕いたのは悪魔払いだった。

 アンディンさんは故郷スマトラ島(Sumatra)のメダン(Medan)近くの奇妙な導師の元へ無理やり連れて行かれた。導師は遺体を覆うために使われる布をアンディンさんにかぶせ祈りをささげると、「女性としての生活を諦めるか、地獄に行くか」という究極の選択を迫った。

「悪魔払いを受けても何も変わらなかった。私は今も性的少数者(LGBT)だが、家族は簡単には諦めなかった」とアンディンさん。「トラウマになる体験だった。恐ろしい記憶が頭から離れない」

 世界最大のイスラム教人口を擁するインドネシアでは、同性愛者やトランスジェンダーの人々が悪魔払いを強制されることが珍しくない。その上、ここ数年で社会がさらに保守化し、性的少数者らはますます標的にされている。

 イスラム法を厳格に適用する保守的なアチェ(Aceh)州を除き、インドネシアでは同性愛は合法だ。

 しかし一方で、同性愛者やトランスジェンダーは悪霊に取りつかれた結果で、宗教的な儀式や祈りによって悪霊を追い出せると広く信じられている。

 性的少数者に悪魔払いを行っているアフマド・サドザリ(Ahmad Sadzali)さんは、成功例として「ある男性は、たった2回の治療ですっかり治った。治療の1か月後には女性と結婚した」と自慢した。

 ジャカルタにある6か所の診療所では、性的少数者を「治す」悪魔払いを行っていることをAFPに認めたが、それを公然と宣伝している診療所はなかった。

■「矯正治療」を強制する法案

 近年の調査では、インドネシアでは不寛容と過激主義が増加傾向にある。2017年のある調査では国民の80%以上が、国が厳格なイスラム法を採用することを支持していることが示唆された。

 中でも独自のイスラム法が採用されているアチェ州では、同性愛は公開むち打ちの刑に処される可能性がある。2018年には警察がトランスジェンダー女性のグループを拘束し、強制的に髪を切り、男性の服を着せるなどして公然と屈辱を与えた。

 またスマトラ島のパダン(Padang)市当局は同年、大規模なデモを受けて、性的少数者の住民に「罪深い行為」をやめるための治療を受けるよう命じた。

 イスラム教保守派の議員たちは現在、「家族の回復」と称する法案を提出している。性的逸脱行為を追放するとうたうこの法案が通過すれば、同性愛者やトランスジェンダーの人々は「リハビリ」という名目で悪魔払いなどの「矯正治療」を強いられることになる。法案反対派はこの法案について、性差別的で反LGBT的だと非難している。

 しかし、過酷な法改定に声高に反発している少数派もいる。

「女性に対する暴力国家委員会(National Commission on Violence Against Women)」の元委員ブディ・ワヒュニ(Budi Wahyuni)氏は、「悪魔払いなどの転換療法は、性的少数者に対する暴力だ」と非難している。

【翻訳編集】AFPBB News

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