悲願の賜杯を手にした。関脇正代(時津風部屋)が大相撲秋場所の千秋楽(27日・両国国技館)で新入幕の翔猿に攻め込まれながらも土俵際で逆転の突き落としを決めて初優勝。白鵬と鶴竜の両横綱が初日から休場し、終盤まで混戦模様となる中、しっかりと白星を重ね続け、13日目には貴景勝、14日目には朝乃山と両大関を破って13勝2敗の好成績で初Vを成し遂げた。
(allanswart/gettyimages)
直近3場所の勝ち星の合計は「32」で大関昇進の目安とされる「33」には届いていないが、それでも昇進の議論を預かる立場の審判部・伊勢ヶ浜部長(元横綱旭富士)は13勝の好成績で今場所優勝を果たしたことを高く評価した。八角理事長(元横綱北勝海)に大関昇進を諮る臨時理事会の招集を要請し、今月30日の同会開催も決定。これで正代の大関昇進は確実となった。
熊本県出身力士として初の賜杯を手にした正代は花道から支度部屋に戻る途中、思わず男泣き。嬉しさと重圧から解放された安堵感が重なっただけでなく、自身の脳裏にはここまでの辛苦も走馬灯のように駆け巡ったのだろう。そして出身地の熊本・宇土市で自らを支えてくれた両親や親族、後援会関係者ら多くの地元の人たちに向け、そして出身校・鶴城中時代の同級生で25歳の若さながらも天に召された亡き親友にも深い感謝の念を心の奥底から送っていたに違いない。
かつての正代と言うと「ネガティブ」というイメージを象徴するかのような力士であり、2015年秋場所前の新十両会見では「対戦したい相手は?」との問いに「誰とも当たりたくない」とさらりと答えたこともあった。歯に衣着せぬ物言いで定評のある元横綱の大相撲解説者・北の富士勝昭氏からも「やる気が感じられない」「稽古をしない」などとボロカスに言われ続けていたのも有名な話だ。
それが、今はどうだ。これまで手厳しかった北の富士氏も正代の相撲を激賞するようになり、実際に同氏はスポーツ紙の連載コラムで「今年になってまるで変わってしまったようだ。負けてもニヤニヤしていたころの正代はいったい、どこへ行ったのだろう」と指摘している。
幕内から11人もの休場者が出てしまったことは残念極まりないが、終わってみれば今後の相撲界の盛り上がりを予兆させるような本場所となったように思う。来場所には復帰してくるとみられる白鵬、鶴竜を脅かす存在として大関の番付に正代が加わったことは喜ばしい。貴景勝、朝乃山も正代の勢いによって活性化され、この3大関が白鵬と鶴竜の時代に歯止めをかけていく流れを作ってほしいと願う。こんな世の中だからこそ好角家はもちろん、そうでない人たちにもわくわくする気持ちを与えられるような「新時代」を正代ら3大関が中心になって何とか築き上げてもらいたい。
その「新時代」と言えば、日本は多くの国々と同様に新型コロナウイルスの感染拡大を何とか抑えつつ、経済も回していくという共存の道を選び「新しい生活様式」を踏襲しながら突き進むことになった。政府の制限緩和にならってプロスポーツ界やイベントはこぞって無観客から有観客開催に転じており、日本相撲協会も今場所会場の両国国技館に収容人員のおよそ4分の1に当たる上限約2500人の観客を入れ、7月場所同様に厳重なウイルス対策を講じて実施された。プロ野球の各球団やサッカー・Jリーグの複数のクラブは政府による人数制限緩和に伴って各会場の観客数上限を約半分にまで引き上げているが、相撲協会も11月場所(11月8日初日・両国国技館)から独自の方策を基に増やしていく方針だ。
ただ、この有観客が解禁となった、ここまでの2場所では少なからず〝問題〟もあった。コロナ禍における観戦マナーである。7月場所と9月場所が行われた両国国技館では他のプロスポーツの試合やイベントと同様、ソーシャルディスタンスを考慮した客席の配置がなされ、観客に対しては入場の際のマスク着用、そしてアルコール消毒と発熱検査が当然のごとく義務化された。そして観戦時は声援を送ることが厳禁とされ、ただ黙って土俵上に視線を送り、応援は拍手のみOK――。実は、この「拍手」もとい「手拍子」を巡って一部相撲ファンの間で物議を醸している人がいる。どうやら通称「パンパンおじさん」とも呼ばれているらしく、SNSやネット上で話題になっている方である。
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