198X年シオカワ市では、ある奇妙な出来事が起こっていた。ローブ姿の影が夜な夜な森に現れ、人々が行方をくらましている。そして、奇怪な怪物が海辺の町を恐怖に陥れているというのだ。かつて地球を支配していたおぞましい古の悪神が、再び甦ろうとしていた……。
そんな導入から始まる本作『WORLD OF HORROR 恐怖の世界』 は「伊藤潤二とH.P.ラヴクラフトへのラブレター」と銘打ってあるように、人知を超えた不条理な恐怖「コズミックホラー」の流れを汲んだアドベンチャーRPG。「海辺の町で起こる怪奇現象」というのも、クトゥルフ神話の代表作「インスマウスの影」へのオマージュです。本稿では、パブリッシャーから発売前に配布されたPC版をプレイしたインプレッションをお届けしていきます。
本作のプレイヤーはこの町に潜む謎と、影から支配する邪神の存在について解き明かしていくというゲームを遊んでいる……という設定。画面の色彩も好みに変更でき、真夜中の窓辺に「変なものが映るかも?」と気にしながらのプレイも可能なので、ホラーの雰囲気をさらに楽しみたいという人は試してみるといいでしょう。なお、4K環境だと表示が崩れるのでWindowsの解像度設定を低く変更してからの起動を推奨します。
好奇心は猫をも殺す。最後まで正気でいられるか
ゲームはローグライク的なエッセンスを含んだTRPG風スタイルで進行し、イベント発生時にパラメータ、武器、技能などで判定が生じます。開始時に選ぶ主人公の能力によって、プレイスルーに変化が起こる仕組みです。怪奇現象によって減少する、いわゆる「SAN値」に相当する「REASON」という値も存在します。そのため、気になるところを逐一調べているとあっという間にゲームオーバーです。
調査する怪奇現象は1プレイにつき5シナリオ。選択によって相互に影響していきます。シナリオには分岐が複数存在するため、1回のプレイですべてを拾いきることはできません。主人公を変えて周回プレイすることで、全体の謎が明らかになっていきます。実績によるアイテム解禁もあるので、プレイを繰り返していけば探索が楽になっていくでしょう。
もちろん調査は一筋縄とはいかず、様子のおかしい住民に襲撃されることもしばしば。ひとつ謎解きを終えるごとに町の様相は悪い方向へ変わっていきます。世界が狂気に染まっていく中を、恐怖に怯えながら調査していかねばなりません。
調査の拠点となる自宅ではセーブや衣装替えなどができます。入浴すると経験値増加などのボーナスが得られるので、調査の前にひとっ風呂浴びればある程度進行が有利になるでしょう。
なお、自宅以外ではセーブが不可能で、エピソード中の進行は中断すると消えてしまいます。さらに、セーブすると装備武器類が一旦自宅に保管され、スペルを忘却するなどのデメリットがあるので、再開するときには留意しておきたいところ。
調査では町にある各施設を利用することができ、アパートで協力者を募ったり、学校の図書館では”術”を覚えたりすることも可能。探索を始める前にしっかりと準備しておきましょう。
場所の探索は、発生するイベントに対して選択肢を選ぶ形式。大半のイベントにはパラメータチェックが入っているので、可能な選択肢でも失敗してしまうことが多いです。体力値、REASON値は全シナリオ通して温存する必要があるので、今の能力でできそうなこと、難しいことを考えながらロールプレイを考える必要があります。下手な深入りをすると大ダメージを食らって立て直しが厳しくなるので要注意。
最後の手段は神頼み? 豊富な攻撃方法を試してみよう
ある程度調査を進めていくと、何者かに襲いかかられて戦闘に突入することもあります。戦闘イベントはターン制コマンド入力で行われるシステム。ターンごとに攻撃の手段、アイテム使用などの複数コマンドを選択し、「戦闘行動の流れ」を構築するゲージが一杯になったら確定し、行動を実行……という流れです。
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このコマンドのバリエーションが意外に多く、強撃、身構えるなど攻撃だけでも種類があり、協力者がいれば向かわせることもできます。周囲にあるものを使ったり、さらには神頼みまで使用可能。制限時間は無いので、落ち着いて有効な手を選んでいきましょう。
猟奇殺人鬼は序の口、素手では太刀打ちできない怪物も早くから登場します。戦闘中に武器を探すこともできますが、できれば探索中に武器を見つけたらすぐに装備しておきましょう。
1シナリオを終えると、その都度意味ありげな灯台の鍵が主人公の自宅に届きます。最終的には頑丈に施錠された灯台の扉を開き、その先に待つ真実を見出すことに……。しかし、謎を解くごとに町の様相は変わっていきます。情報の遮断、警察による封鎖に始まり、怪奇現象はさらにエスカレートしていくのです。
プリセットシナリオ「ハサミ女」編では、クライマックスの怪異とパズル要素を一足先に体験可能。初回プレイ時はまずこのシナリオを選択していきましょう。
クトゥルフ神話を題材にしたホラーゲームは多数あれど、伊藤潤二風の得体の知れない怪物が迫ってくるとなれば、プレイヤーのREASON値も容赦なく削られていくことでしょう。ジャンプスケア系の演出はもちろん、やたらと動くあからさまに怪しげなものを手で触らざるを得ない場面もあります。モノクロとはいえ猟奇的、グロテスクな表現もふんだんに含まれており、「痛い」ものが苦手な人には刺激が強いかもしれません。
本作は日本語に対応予定ではあるものの、短い状況文に対してリアクションを返していく進行のため、一般的な英文が読めれば英語版でも難なく進行できます。TOEICで言えば500~600点台、英検で言えば2級~2級A程度の英語力があればプレイ可能といった印象です。ただし、物語の要所でオカルトや傷病に関する語彙が出てくるので「これってなんのことだろう?」と気になって検索した際に、ショッキングな画像に当たらないよう気をつけたほうがいいでしょう。
伊藤潤二とラヴクラフトを組み合わせるという、「混ぜるな危険」を実行してしまった『WORLD OF HORROR 恐怖の世界』。理性が徐々に蒸発する不条理ホラーの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。本作は
Steamで2月21日より配信。 英語以外の言語、さらなるミステリーやキャラクター、イベントを備えたバージョン1.0はPC/Mac/PS4/ニンテンドースイッチを対象に2020年後半リリース予定です。
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